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■役割を与えられると、人はそれを演じようとする「内気だから、オレは客商売には向いていない」。こんなふうに、自分の性格や能力を自分で決め付けてしまう人がいます。しかし、そんなことを考えていると、自分で自分を縛ることになってしまいます。 性格は生まれつきのものなのか、それとも生活環境で作られた後天的なものなのか、この問題については、昔から激しい議論が繰り返されてきました。 性格というものを考えるときにわかりやすいのが、人格の構造を同心円で表す「タマノギ説」です。 ★中心部分の「気質」は生まれつきのものですが、外側へ行けば行くほど後天的なもので変化するとされています。とくに、いちばん外側の「役割的性格」は、自分の地位や職業によって後天的に身に着けるものです。 たとえば、同じ家庭環境で生まれ育った兄弟でも、兄が銀行員、弟が漫才師になれば、性格はまったく違ってきます。銀行員は銀行員らしく、振る舞うことでしょう。 銀行員なら、品行方正で大人しく、地味だけど小綺麗な格好を心がけるということを周囲から要求されるでしょうし、漫才師なら、「面白いことを言ってくれる人」「派手な格好をすべき」「遊び人」というイメージを抱きます。 このような要求やイメージを与えられると、人はこの役割にふさわしい仮面を着けることとなり、いつの間にかこの仮面が自分の性格になるとわかっています。 これを実証した恐ろしい実験があります。 「スタンフォード監獄実験」といわれるものですが、新聞広告などで集めた普通の大学生を看守役に分け、それぞれの役割を実際の刑務所に似せて作った設備で演じさせたのです。 時が経つにつれ、看守役の大学生はより看守らしく、受刑者役の大学生はより受刑者らしい行動をとるようになり、ついには看守役が囚人役に懲罰を与えるという事態にまで発展してしまったそうです。 ★この心理をよい方向に応用すれば、嫌だと思っている自分の性格を直すことも可能です。 たとえばアガリ症の人は、自分に「人前で話す」という役割を与えてみましょう。まず家族の前で話すことからはじめ、これに慣れたら今度は友人たちとの集まりで積極的に話すようにしてみます。 こうして人前で話すということを繰り返すうちに、人前で話すことに緊張を感じなくなっていきます。ここまでくれば、会議などで意見や企画などを出してもアガらなくなるはずです。 |
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